『知の編集工学』

『知の編集術』の方は、編集学校で配られたので読んでましたが、
それより少し古い(単行本が出たのが1996年)こちらの本は、
師範代コースのお題で参照箇所があり、今回やっと買いました。
http://www.amazon.co.jp/dp/4022613254


とりあえず、 ここでオブジェクト指向プログラミングと
Smalltalkに出会うとは思わなかった。
そこは相当びっくり。

以下、要約と感想です。

エディティングモデル

師範代コースで参照していた話は、
エディティングモデルの交換の話。
人と人とのコミュニケーションのモデルとして、
メッセージを交換しているのではなくて、
メッセージを含んだエディティングモデルごと
交換するというところでした。
まさに、この話を今勉強中。
相手が編集稽古の回答に何を選んだか、
それは相手がどんなエディティングモデルを
持っているからそうなったのか。
それを考えて、こちらのエディティングモデルと交換し、
新たな気づきとかを感じてもらう。
(こちらもそれを通じて学ぶことがある)


エディティングモデルは、自分の経験や知識の
積み重ねからできている。(そこからしか作れない)


普段の仕事の中でも意識して使うと、いいだろうと思って、
そうしようとして、まだ難しいところです。

弱さ、フラジャイル

システムはこれまで強さをもとめてきたけど、
弱さも必要じゃない?と言っている。
リニアじゃなくてノンリニア
ハードは頑丈でもいいとしても、ソフトはやわらかく。
(その名の通りだけど)
ソフトウェアだけじゃなく、人のコミュニケーションもそう。
この前、応用コースの中で、弱さも大事って話で
仲間に励まされたことがあったなぁ。

校長のエクササイズ

よく、松岡校長は、
「自分とみんなの違いはエクササイズをどれだけしたかだ」
というようなことを言う。
そのエクササイズの内容も書いている。
(それが後に編集学校のカリキュラムにもつながってる)
町を歩いていても、歩くたびにいろいろ目に入って、
それらについてぱっといくつか連想が始まるけど、
すぐに違うものにまた注意がひきつけられていくとか、
そういうのをずっと観察していたみたい。
人との会話の時もそういう観察をしていて、
すると情報がどんどん膨大になって、その中でつながりあったりして、
その情報の景色を眺めつつ、会話できるようになっていく。
それに慣れると、自分の発言にこだわる必要がなくなる、
自分が入れ替え可能な状態になる。


景色、眺められるようになってみたいなぁ。
それには練習しかないですね。
自分が比較的傍観者でよい場合の会議から始めるといいのかな。


物語

応用コースでは物語を書いた。
ある映画から、ストーリーの構造を読み取って、
それと同じ構造で別のワールドモデルを選んで、
ストーリーやシーンやキャラクターやナレーターを決めて書いていく。
そういう物語が最初にあって、言語体系もできていった。

らしさ、エディトリアリティ

これは、編集学校でいろいろやったなぁ。
細かく分析して比較するのでなく、全体感からくるらしさ。

オブジェクトとサブジェクト

オブジェクトとサブジェクトが引き離されてきた現代があるけど、
著者は、それは引き離されるべきでなかったと言う。
この辺りを読んでいて、オブジェクト指向の話を思い浮かべた。
このあと、まさかほんとにその話が出てくるとは、このときは思わなかった。

コンピュータの話

マッキントッシュがデスクトップとマルチウィンドウを実現したとき、
著者はとても感動したよう。これまでの文房具を180度ひっくり返すものだと。
とはいえ、まだ編集のための文房具として不満もあった。
近代的自己を前提に作られていて、最初はかならず白紙から出発する。
でも人間は情報の前では白紙になれない。
編集途中の状態からスタートできる文房具があってもいい。
あと、物語も不足している。
物語構造の中で編集ができるようなソフトがあってよい。
でもなかなかそれができないのは、
何をしたいかと(What)とそれをどうやるか(How)の間に
溝があるから。
システム屋さん的に言うと、要件定義でWhatを決めても、
設計のHowがないと動かないということ。
で、校長はもう10年以上前に、それを考えて
オブジェクト指向を使えばいいとなったらしい。
で、データと手続きが一緒になる、オブジェクトとサブジェクトが一体化すると。


オブジェクト指向のほかにエージェント指向という言葉もでてきている。
これは私の知る限りほとんどシステム業界で聞かない。
今でいうサービス指向(SOA)のことかな。


今となってみれば、システム開発の世界では、
オブジェクト指向は日々使われるようになっている。
でも、最近校長はあまりシステムの話をしてないように見える。
なんでなんだろうなぁ。
ちょっと手を出すのが早かったのか??

校長の問題意識

自然や生命や社会の根底にある矛盾に介入したくて、
編集的に考えてきた。

ワクワクする話:自由編集状態

ハイパーリンク
ノンリニア
知識の並びを再編する
 ネットワーク的にグループウェア的に知識を立体的に並べ替える

wikipediaって校長的にはどんな存在なんだろうなぁ。

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本の要約と感想がかなり混じってしまいました。。。
でもやっぱりオブジェクト指向とか出てくると、身近に感じてしまう。
今度校長に会ったら聞いてみたいことが増えたな。

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2009/04/01追記
現在再読中。

「動くプロセスの複合体」、「自立的関連化」、「自発的触媒性」
などという言葉に、オブジェクト指向だけでなく、
アジャイルにもつながるなぁと思ってしまった。